北田 雄夫氏 / アドベンチャーランナー
1984年生まれ、大阪府堺市出身。中学から走ることを始める。近畿大学陸上競技部に入部後、選手として主将として日本選手権4×400mリレー3位。卒業後、就職し一度は運動を辞めるも、再び競技を始める。IRONMAN完走、アフリカ最高峰キリマンジャロ5,895m登頂、山口萩往還140kmマラソン完走など、様々な経験を積み2014年、アドベンチャーマラソンに参戦。それまで勤めていた会社を退職し、競技に専念する道へと進む。同年にGobi March(中国/ゴビ砂漠250km)、Atacama Crossing(チリ/アタカマ砂漠250km)を走破。2015年、日本人で初めてTHE TRACK(オーストラリア521km)に挑戦し世界10位となる。FIRE+ICE(アイスランド250km)では3位入賞。2017年、『日本人初の世界7大陸アドベンチャーマラソン走破』を達成。現在講演、執筆、レース映像の配信などを通じて、世界の果てで学んだ経験を伝える活動を行う。
アドベンチャーマラソンに挑もうと思われたきっかけをお聞かせください。
世界にチャレンジしたかったんですね。かつ誰もやっていないことにチャレンジしたいという思いがあった。そんなときにこの競技にちょうどめぐり合って、飛び込んだのがきっかけです。陸上競技を中学・高校・大学と続けてきて、大学3年のときにはリレーで日本3位までいくことができたということもあったので、社会人になってもう一度チャレンジしようというときに、昔の自分を越えるような、新しいチャレンジができるようなことをしたいということが前提にありました。そこで最初はマラソンから始めたんですけど、やるんであれば思い切って勝負をしたいということで、アドベンチャーマラソンの世界に飛び込みました。
長距離を走破するためには、気持ちの持続やスイッチを切り替えるのが相当大変だと思うのですが。
本当に大変ですね。やっぱり全行程、例えば200キロを走らないと、と最初に考えてしまうと、気持ちを持続させるのが難しいのですが、アドベンチャーマラソンはステージ形式で、ぶっ通しで200キロ走るわけではなく、1日あたりおよそ40キロ、それを5日間続けて走りますので、まずは1日走る距離を目標に設定し、モチベーションをコントロールしたりスイッチを切り替えたりしながらクリアしていくように考えています。
今までいろんなところを走ってこられたと思うのですが、身の危険を感じられたことはありますか。
あります(笑)。何度もあるんですけど、一番覚えているのはチリ・アタカマ砂漠のレースに行ったときですね。そこは標高が3,200mもありまして、富士山でいうと8合目あたり、酸素量も平地の2/3ほどしかないので、ただ走るだけでもすぐに息が上がってしまう。しかも日中になると気温が45度まで上がり、もちろん日陰もない。突き刺すような日差しが降り注ぐなか、1日中走り続けるので、熱中症と脱水症と、高山病にかかってしまって…。これは本当に危ない、と思いましたね。
そんな過酷なアドベンチャーマラソンに挑戦されながら、現在も会社員として週4日勤務されている北田さん。転職を経験されて現在の会社に入られたとお聞きしましたが、以前の会社ではどのような仕事観を持ちながら働かれていたのでしょうか。
新卒で最初に入社した会社では、3年ほど働かせていただきました。やはりその時は大学を卒業して新社会人としてバリバリ活躍したいというフレッシュな思いで頑張りました。サンドイッチやお弁当などの食品に使われるプラスチック容器を扱うメーカーの営業職だったので、営業先としては食品の問屋さんやメーカーさんを中心に訪問していました。
大変だな、と感じるようなことはありましたか。
いやあもう全部が大変でしたね(笑)。特に大変なのはお客様とのコミュニケーション。やっぱり社会人って学生とはぜんぜん違うじゃないですか。お客様も生活がかかっているわけですから、学生気分でいくと当然怒られますし。特に交渉事なんかはそれまでまったく経験がなく、特にお客様にとって不利な交渉をしないといけない場面なんかは本当に大変だと感じましたね。言葉遣いにはじまり、どうやったらお客様の立場になって物事を考えられるか、そんなことを散々考えたり、悩んだりした覚えはありますね。
次に挑戦するレースは具体的に決まっているのでしょうか。
来年8月にピレネー山脈を横断するレースがあるので、それにぜひチャレンジしたいと思っています。866kmもの距離を、17日間(400時間)以内に走破するというものです。これまで世界の7大陸でたくさんの経験をし、力も自信も付けてきました。これからもこのアドベンチャーマラソンという競技の最高峰に挑戦し続けていきたいですね。
最後にこれから就職活動をする新卒の方に向けたメッセージをいただけますか。
就活はすごく大変だと思いますが、ぜひプラス思考で楽しんでもらいたいなと思います。というのも、僕は就職活動も転職活動もすごく面白かったんです。就職活動は本当にいろんな会社、いろんな働き方、生き方をしておられる方々に出会える、すばらしい機会だと思います。もちろん人生をかける働き口を探すということでもありますから、志望企業に受かることも大事だと思います。でも長い目で考えると、いろんな業界の方、いろんな考え方を持っている方に出会って知識や情報を得る場にしたほうが、自分にとってプラスじゃないですか。うまくいかなくて悩んだり、意中の企業から断られたり、そんな大変なこともきっとあると思いますが、自分を磨くことができる絶好のチャンスだと思って、前向きに楽しんでやっていってほしいなと思います。